ストーリー裏話
(●ネタばれ:はマウスで反転させると読めます)

第1話:罪の代価

1795年冬フランスは革命後の恐怖政治が支配する暗黒の時代をむかえていた
一人の男がパンを盗んだ現行犯で連行されてきた。
彼の名はジャン・バルジャン。
4度の脱走に失敗し、釈放されるまで19年もの期間を獄中で過ごすことになった。
出所する頃には彼の目に希望はなく、ただあきらめと社会への憎しみしか宿ってはいなかった――

連載第一話なので、いかに印象付ける出だしにするかで、結構迷いました。
毎週二ページなので、ある程度話が進展しないとつまらないけど、
詰め込みすぎると演出もできず、ただストーリーを追うだけのつまらないものになってしまうし、
しばらくは試行錯誤しながら感覚をつかもうかといった感じでした。
ちなみにジャンが
姉と7人の子供と叫びますが、姉の子供であってジャンには子供はいません

第2話:烙印

ジャン・バルジャン。釈放された徒刑囚。徒刑場に十九年服役強盗で五年脱獄未遂四回で十四年。この人物はきわめて危険である──
一九年の刑期を終えたジャンを待っていたのは世間からの冷たい仕打ちだった。
彼が前科者だとわかると誰も宿を貸そうとはせず、行き場のないジャンは寒空の下野宿をしようとする。
通りかかった親切な婦人が「あそこの家を訪ねなさい」と一軒の家を指差す。
ジャンは言われた通りその家の戸を叩き、自ら前科者であったことを告白する。
そんな彼を家の主人は自分の兄弟として家に招待すると受け入れるのだった
主人の名はミリエル司教。彼との出会いがジャンの生涯を大きく変えることになる――


一般の旅券と色分けされた前科者の黄色い旅券。冒頭のくだりはそこに書かれた注意文である。
当時は国内であろうといつ憲兵に提示を求められてもいいように常に旅券の携帯が義務づけられていたのだそうな。
一度犯罪に手を染めた者が更生するのは困難な時代だったようです。

●ネタばれ:――初期のシナリオではミリエル司教宅から銀器を盗み出すところまでを予定してましたが、
前科者への仕打ちを描かないと後のミリエル司教の善意が引き立たないかと思い第三話と分割しました。

第3話:闇夜

ミリエル司教の意外な言葉に己の耳を疑うジャン。
徒刑囚であることを承知でなお、銀の食器で食事をもてなすミリエル司教。
しかしその夜ジャンは銀の食器を盗み、闇の中に姿を消すのであった。


このときジャンは社会の全てを憎んでいました。
不況の只中、生きるためには物を盗むしかなかった。犯罪者には許しがなく、釈放されてからでさえ前科者の烙印から逃れることができない――
その中で初めて人間として扱ってくれたミリエル司教に対する感謝は計り知れないはずなのだが、そこで素直になるにはあまりにも心の傷が深すぎたのでしょう。恩をあだで返すこの行為、この時点の彼なら仕方のない行動なのかも知れません。
編集長に「ジャンの言葉遣いが乱暴だ」と指摘されまして「よし」と思ってしまいました。
だって改心後に変わる言葉遣いとのギャップは激しい方がいいでしょ?

第4話:銀の燭台

深夜銀の食器を盗み出しだジャンは途中で憲兵に捕まりミリエル司教の家に連れ戻されていた
しかし司教は「その食器は自分が彼にあげたもの」だと言い、さらに銀の燭台もあげたのに何故持っていかなかったのかと詰め寄る。
逮捕理由のなくなった憲兵はジャンを釈放してその場を立ち去る。
何故自分をかばったのか理解できないジャンにミリエル司教はこれからは誠実な人間になることを約束させるのであった――


本来見開きページをぶち抜きで描くべき見せ場の話も二ページに収めるためトーンダウン。
盛り上がりの欠ける展開になってしまいましたね。
ま、本当の転換点は次の事件のときなので――

●ネタばれ:ミュージカルや映画ではこれをきっかけにジャンが改心して善良な男に生まれ変わります。――が、絶望と恨みの塊の彼が、罪の自覚もなくかばってもらっただけで愛や許しの世界を悟って悔い改められるものでしょうか?彼は何が起こったのか理解できず、また自分の心の底で疼きだした良心に困惑するだけだったはずです。ここはそう思って原作通りの流れにしてみました。

第5話:慟哭

ミリエル司教の館を逃げるように飛び出したジャンの心は司教の言葉に激しく動揺していた
町外れの石垣に腰をおろしていると一人の少年が近づいてきた。
ジャンの足元に硬貨を落としたから返して欲しいと言うのだ。
混乱していたジャンは少年を追い払ってしまう。
しかし彼の足元には少年の言ったとおり銀貨が光っていた。
慌てて少年を探すジャン。
しかし少年の姿はもうどこにもなかった
雨の中立ち尽くすジャン。
彼の頬を一筋の涙がつたった――


悔い改めは己の罪を悟って初めてできるもの。
ミリエル司教の愛に触れたジャンはその司教との約束を破ったことで己の罪を悟ります。
ミュージカルや、映画でカットされがちなエピソードですが、
刑期を終えて釈放されたジャンが再び追われるようになるのはこの再犯が原因なのです。
(当時再犯は終身刑だそうな)
ちなみに硬貨(40スー)のデザインは調べたけれどわかりませんでした。ナポレオンの銀貨などが資料で見かけましたが、この頃には彼の100日天下も終わってますし、誰の顔が刻まれていたのか……

第6話:転機

ミリエル司教との約束を守り誠実に生きることを決意するジャン。
そんな彼に前科者の烙印である黄色い旅券が重くのしかかっていた。
モントレイユ・シュル・メーユに流れ着いたジャンは偶然役所の火災現場に遭遇し取り残された子供を救い出す。
助けた少年の父親はこの町の憲兵隊長だったため、かれは旅券の提示をまぬがれ、自らをマドレーヌと名乗った。
この街での再起を誓い、自ら黄色い旅券を破り捨てるのであった――

●ネタばれ:
役所の火災現場から憲兵隊長の子供を救いマドレーヌと名乗るわけですが、
旅券を破り捨てたジャンはマドレーヌとして旅券を再発行してもらいます。
火災現場に飛び込んだときに燃えてしまったことにでもしたのでしょうか。

第7話:忍び寄る過去

ジャンがこの地でマドレーヌと名乗るようになってから数年が過ぎたある日一人の男が警部として赴任してきた。
活気のある街並み、全ては今の市長がもたらしたものだということに感心し、就任の挨拶をしに市長に会いに行こうとする。
その市長こそマドレーヌ。すなわちジャンであった。
ジャンのもとを尋ねる警部の名はジャベール。彼の顔を見たジャンはその場で驚愕するのであった――

ジャンとジャベールの宿命の出会い。今後はこの二人が物語りの主軸を担うことになります。(多分)
二人の関係が複線として描かれてなかったため、どうやって登場させようか迷いましたが、とりあえずジャンがマドレーヌ市長になった現時点の舞台説明はできたかなと。

●ネタばれ:ジャベールが警部としてこの街に赴任してきた時期に関しては不明です。この時点でマドレーヌはまだ市長になっておらず、当然就任の挨拶などという顔合わせはしていません。(でもこの方が人間関係わかりやすいんで……)

第8話:消せぬ疑念

新しく赴任してきた警察署長はジャン(マドレーヌ)が徒刑場にいたときの官憲であった。
ジャベールはまだマドレーヌの正体がジャンであることに気付いてはいなかった。
そんなある日街で馬車が転倒し老人(フォーシュルバン)が下敷きになってしまう。
その場に居合わせたジャンは馬車を持ち上げて助け出そうと周りの人に呼びかけるが、誰も手を貸す者はいなかった――

●ネタばれ:ジャンが徒刑囚の中でも抜きん出た怪力だという複線をどこかに張らないといけないため、ここも二話に話を分けました。(ゴテゴテですな。)
そのせいでコマ数が減り、大ゴマが増えてしまって編集側から指摘されてしまいました。(^_^;)

第9話:疑惑

ジャンの呼びかに、誰も手を貸す者はいない――
意を決したマドレーヌ(ジャン)は一人で助け出そうと馬車を持ち上げようとする。
市長まで潰されてしまうと止める群衆の中に騒ぎを聞きつけたジャベールの姿が。
たった一人で馬車を持ち上げ、フォーシルバンを助け出すジャン。
市長の並外れた怪力を目の当たりにしたジャベールは市長の正体に疑惑を持つのであった――

徒刑場でのエピソードとして市役所の人像柱が倒れかかっていたのをジャンが一人で支え、人夫たちが駆けつけるまで持ちこたえたという複線があるそうです。原作読んでおけばもう少しスマートな展開にできたかも……
先週よりは大ゴマが目立たないだろうと思っていたのだが、実際に刷り上ってみると結構大ゴマでした……(先週から他の連載の執筆も平行して進めていたため、紙面がA3サイズだってこと忘れてB5レベルに縮小された原稿を想定してました。)
それにしてもセリフのフォント、も少し大きく入れてもらえないものだろうか。

●ネタばれ:原作ではこの時点でもマドレーヌは市長ではなかったようです。工場経営により市を活性化させた功績で国王じきじきに市長就任を薦められたのを一度辞退しています。この事件の後、再び国王からの要請があり、また断ろうとしたところ、通りがかりの老婆に「あんた以外に誰が……」(忘れちゃいました^_^)と怒鳴られ、就任を承知したそうです。

第10話:容疑の目

病院にフォーシュルバンを見舞うマドレーヌ(ジャン)は全てを失った彼にパリでの仕事を紹介する。
涙を流し感謝するフォーシュルバンは同じ流れ者でありながら成功したマドレーヌ(ジャン)に嫉妬していたことを告白し、詫びるのであった。
その頃ジャベールは部下にマドレーヌの身辺調査を指示していた。
事故で見せたマドレーヌの怪力が過去トゥーロン徒刑場で見たジャンバルジャンと重なったのだ。
はたしてジャンの運命は――

病院といえば窓があって日当たりのいい病室を想像していたのですが、当時の建築物の構造やおそらく教会などを改造した建物だろうという予想から窓なしの大部屋をカーテンで区切っただけの構造にしてみました。
実際資料的にもいいセンいってるらしいです。(美術設定は毎週ギャンブル状態――)

●ネタばれ:原作ではジャベールはこの事故以前から既にマドレーヌの正体がジャンだと見破っていたようです。
フォーシュルバンを助け出すのに誰も手を貸さずにいると、「徒刑囚なら持ち上げられるだろう」とマドレーヌを挑発したそうです。
――まぁこれはこれでいいでしょ?

第11話:悲しき女工

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