ストーリー裏話
(●ネタばれ:はマウスで反転させると読めます)

第11話:悲しき女工

娘を預けてある宿の主人からの手紙を読むファンティーヌ。
彼女はマドレーヌの経営する工場で働く女工であった。
ある日工場長に呼ばれた彼女は解雇通知を受けてしまう。
この工場はマドレーヌの意向で差別なく誰でも働くことができるようになっていたが、ただ一つ、男には善意を、女には純潔を、すべての人に誠意を。という信条を義務付けていたのだ。
ファンティーヌは未婚でありながら子供がいることが知られてしまい、この信条に違反したというのだ。
路頭に迷うファンティーヌ。しかし仕送りの催促の手紙は容赦なく送りつけられてくる。
身の回りのものを売り、自らの髪の毛も売り、すべてを売り払った彼女は最後の選択を迫られる。
生き抜くために娘を捨てるか
娘のために自分を捨てるか――
もう彼女が送金を続けるには娼婦になる以外道はなかった……。

ようやく女性のメインキャストが登場です。
むさい男どもだけのストーリーはひとまず置いて、花一輪ですね。
娼婦になるかどうかなんて暗い展開なんですけど……
髪の毛は当時かつらとして売買されていました。ファンティーヌの髪は綺麗だったらしく10フランで売れたそうです。
さらに原作ではファンティーヌは前歯2本を40フランで売り歯抜けになっています。
その容貌がもとで後に遊び人のバマタボワにからかわれて事件を起こす遠因にもなるのですが
個人的に空きっ歯の女性を描きたくなかったのでここでは割愛しました。

●原作との違い:ファンティーヌは字が読めなかったようです。
当時こういった読み書きのできない人のために代筆・代読をする代書屋という商売が成り立っていて、ファンティーヌもテナルディエとの手紙のやり取りに利用していました。コゼットの存在がばれたのはこの代書屋が酒場で口を滑らしたのが原因でした。(今の外務官僚じゃないけど守秘義務が必要ですね)。

●ネタばれ:今週・来週にわたってジャン・バルジャンは登場しません。編集サイドから難色の声が聞かれましたが、こればっかりは二ページで展開されるストーリーですし、ゴッチャにするよりは割り切ってファンティーヌの物語を進めさせてもらいます。彼女もまた当時の世相が招いたレ・ミゼラブルなのですから……

第12話:母と娘……

数年前。ファンティーヌはローマで学生のトロミエスと恋に落ちた。
しかし彼は卒業と同時に彼女を捨てて故郷に帰ってしまった。
残されたファンティーヌは途方にくれつつ、彼との娘であるコゼットを産んだ。
生活に困窮し、風の便りで故郷のモントルイユ・シュル・メーユのマドレーヌが経営する工場の噂を耳にし、コゼットを連れて帰郷するファンティーヌは道中立ち寄った宿場のテナルディエ夫婦にコゼットを預けたのだった。
とんでもない悪党とも知らずに――
そう、テナルディエから送られてくる内容はうそでコゼットを口実にお金を搾り取ろうとしているだけだったのだ。
何も知らないファンティーヌは娘のためにと娼婦になった――

今回はファンティーヌの現在置かれた状況を過去にさかのぼって紹介しました。
ファンティーヌと手紙のやり取りをしているテナルディエとの関係、コゼットと離れ離れになったいきさつ、なぜ私生児なのか――
産業革命が起こる前のこの時代、パリの出稼ぎと言っても、帽子や服などのお針子仕事なので一日14、5時間働いてささやかな報酬を得る生活だったようです。(彼女のような女工をグリゼットと呼ばれます)
身分制度が厳しかった当時、いわゆる上層にあたる中産階級の学生と下層階級であるグリゼットとの結婚は事実上まずありえず、学生にとっては現地妻であり、グリゼット側もそれを承知でつかの間のロマンスを楽しんでいたようです。
そのため子供ができたとしても認知されることは少なく、過酷な運命が待っていたことでしょう。
当時このような母子家庭の生活を保護する制度は無く、生きていくためには子供を里子に出して仕事を見つけるしか道は無く、ファンティーヌのような例はごくありふれたシチュエーションだったようです。(恐)
だからってなにもテナルディエ夫妻に預けなくても……て、小説だしなぁ

第13話:情けのかけら

娼婦に身を落としたファンテーヌの生活はまさにどん底の生活であった。
ある雪の日の夜、酒場の通りで客引きをしていた彼女は通りかかった男にからかわれ暴力事件を起こしてしまい、ジャベールに連行されてしまう。
先に手を出したのは男の方だと事情を説刑するファンティーにジャベールは懲役6ヶ月を宣告する。
娘への仕送りのため必死に許しを請うファンティーヌだがジャベールは耳を貸そうとしない。そこへマドレーヌ市長が現れる。
ファンティーヌは自分を解雇したマドレーヌを罵るが、マドレーヌが来た目的はファンティーヌの釈放だった。
目撃証言からファンティーヌに非は無いこと、事件の判決権は市長の自分にあることをジャベールに告げるマドレーヌ。
事態を飲み込めぬファンティーヌに解雇の釈明をしようとするマドレーヌだったが、ファンティーヌは衰弱からその場に倒れ込んでしまうのであった――

第11話の伏字解説で触れたとおり、事件が起きました。ファンティーヌが娼婦になってから3年後のことです。
フランスでは売春を犯罪として規制していません。(今もそうなんでしょうか?)19世紀当時は公娼制度があり、私娼も規制されることは無かったそうです。
ただし性病対策はされており、全ての娼婦は月に一度医療検診が義務づけられていて、3フランの受診料を徴収していたため、これを怠ることの多い私娼は『滞納者』として警察のイジメの対象になっていたようです。

●ネタばれ:>ジャベールは刑務所の中で徒刑囚の父とトランプ占いの母の間に生まれたため、自らの階級に対し呪っていた過去があります。
そのため全ての価値基準を法律に求め、権威に対する尊敬と反逆に対する憎悪が彼の全てだったようです。
そうでなければ徒刑囚ジャン・バルジャンだと思っているマドレーヌ市長の言うことに従えないでしょうね。

第14話:告発

マドレーヌはファンテーヌを自宅の医務室へ運ぶと修道女に手厚く看護させた。
自分が工場の雇用条件に上げた信条ゆえに解雇されたファンティーヌ。彼は彼女の解雇を知らされていなかったのだ。
意識を取り戻したファンティーヌに詫びるマドレーヌ。だが彼女にはわかっていた。マドレーヌが悪くないことを。
職を失って以降の生活があまりにも辛く、誰かを恨まずには生きてゆけなかっただけなのだと――
世間の不寛容によってどん底を彷徨った二人の出会い。
しかしそれをあざ笑うかのごとくジャベールはマドレーヌを告発せんとパリへ馬車を走らせるのだった――

ジャベールがマドレーヌを告発した直接のきっかけは原作読んでないのでわかりません。ここでは展開上スムーズかと思ってファンティーヌがらみにしてみました。実際職務に厳格な性格上、市長からの否定はかなりヘコんだことでしょう。しかも自分では容疑者だと思っていても相手は市長、自分の上司なんですから。
さぁ、物語の展開がどんどん加速していきます。でもちょっと展開がザツになってるかもしれません。実は10日間ほど出張するため13・14話はまとめて描きました。そのため13話と比べると明らかに仕上げが手抜きです。でも堪忍してネ。だってまだ描いてない15話の〆切は出張から帰った2日後なんだもん……(滝汗)

第15話:冤罪

パリ警視庁――
ジャベールがマドレーヌ市長に対する告発理由を説明していると思わぬ事実を知らされ愕然とする。
そのころマドレーヌはファンティーヌの命がもう長くないことを知り、彼女の娘を引き取ることを約束し、委任状のサインをもらうのであった。
テナルディエ夫妻の元へコゼットを引き取りに出かけようと準備するマドレーヌの元にパリから戻ってきたジャベールが現れ、自分を罷免するよう願い出た。
マドレーヌを元徒刑囚のジャン・バルジャンとしてパリに告発した責任をとりたいというのだ。
事実ジャン・バルジャンであるマドレーヌ。詳しく話を聞いてみると、ジャン・バルジャンらしき男がアラスの街で逮捕されており、市長に嫌疑をかけた自分が許せないとのこと。
ジャベールの言葉に耳を疑うマドレーヌ。誰かが自分の代わりにジャンバルジャンとして処罰を受けようとしていることを知った彼は……

ジャベールって男ですよね。他人にだけでなく、自分にも厳しいんです。黙ってればバレない自分の告発も自ら告白し免職を願い出る。
単なる悪役じゃないんス。いつか頃合いをみてジャベールの生き様をクローズアップできる話を挿入したいですね。
出張後の二日間、もうヘロヘロになって描きました。でもこのところうまい具合に次の話数に引っ張れるシチュエーションで展開できてノッてきてます。
――でもジャン・バルジャンが少年の銀貨を奪った嫌疑でお尋ね者になっていることを本編で説明するだけのゆとりがありません。――まぁミュージカルでは仮出所手続きをしないでそのままトンズラこいたことでお尋ね者になってるし、まぁ細かいことには目を瞑ってください(^_^;

第16話:大いなる決断

マドレーヌ(=ジャン)は自分の身代わりとなって終身刑を言い渡されようとしている男のことを考えていた。
男の名はシャンマチウ。ジャベールまでが彼のことをジャン・バルジャンと思い込んでいる。
判決が下るのは明日。
ジャンは出所後4日目にして少年の硬貨を奪ってしまった、いわば再犯者。終身刑は確実である。
マドレーヌの中に様々な想いがよぎっていた。
――19年間も過ごした地獄。逮捕された男がジャンとして処罰されれば、もう怯えることはない。なによりも今マドレーヌがいなくなったらこの街はどうなる?ここを頼って集まってきた工場の職員たち、ファンティーヌとの約束は……
迷う彼の目に銀の燭台が目に飛び込んでくる。「約束してください。誠実に生きることを……」よみがえる司教との約束。
――私はなにを迷っていたのだ……
翌朝アラスの裁判所にマドレーヌの姿があった。そして声高らかに叫んだ
私がジャン・バルジャンです!と――

週刊連載とはいえ2ページものですし、マドレーヌ=ジャン・バルジャンって図式が定着してないと読んでて訳わかんなくなってしまう展開です。

第17話:誠実な生き方

裁判所で自らジャン・バルジャンを名乗ったマドレーヌは、証人として出廷していた三人の囚人の秘密を次々と言い当てた。同じ囚人であったジャンにしか分からないことを。
裁判所は静まり返り、誰も彼を捕らえようとはしなかったのでジャンはその場を去り、自宅のファンティーヌを見舞った。
ファンティーヌはいつ事切れてもおかしくない程衰弱していた。娘との対面を果せるよう必死に励ますジャン。しかしその背後には男の影が。
――そう。ジャンを逮捕しに来たジャベールであった……

他の連載と〆切が重なってしまい、細かい演出とかが抜けてしまいました。ファンティーヌはこの時点で熱にうなされながらも意識を保っていなければならないのに、ここではただ寝てるだけのようにしか見えません(汗)
とてもじゃないけどこの次で
絶望のあまり叫びながら息を引き取る体力あるようには見えませんね。どうしよう……

第18話:報われぬ想い

ジャン・バルジャンの逮捕状を手に現れたジャベール。
ジャンは彼にファンティーヌの娘を引き取り、生活を保障するための期間として3日の猶予を請うが、ジャベールは聞こうとしない。
意識の戻ったファンティーヌが丸一日姿を見せず、コート姿で現れたジャンの姿を見て娘を迎えに行ってくれたものと誤解、コゼットはどこかと質問する。
そんな彼女にジャベールは無情にもマドレーヌの正体をばらし、娘を迎えに行くことが不可能なことを告げる。
娘との再会だけを唯一の希望としていたファンティーヌは絶望のあまり錯乱してしまうのだった――

いやぁ、本当ならもう少しファンティーヌの内面を描き込みたかったんですけどね。コゼットだけが生きていく希望だったことや、娼婦に身を落としたことへの罪悪感との葛藤やら。――でもそれをこれでやっちゃうと話の流れが途切れちゃうんで。単行本だったり、ページ数が多かったら出来たんですけどねぇ。
――ていうか、初期の予定では
ジャベールの制止を振り切って逃亡するところまで入れちゃうハズだったんだから、まだ良くなった方ではないかと……

第19話:逃亡

ジャベールの言葉に絶望したファンティーヌは無念のうちに息を引き取った――
ファンティーヌの亡骸をベッドに寝かしたジャンはジャベールに彼女を埋葬し、娘を修道院へ預けるための時間を再度頼む。
有無を言わせず連行しようとするジャベールはジャンを力ずくで押さえにかかるが逆にジャンに突き倒されてしまう。
よろめくジャベールの隙を突いて窓を突き破って屋根伝いに逃亡を図るジャン。
脳震盪を起こし、薄れ行く意識の中、必ず追い詰め逮捕することを心に誓うジャベールであった――

原作ではジャンとジャベールが取っ組み合う場面はなく、素直に逮捕されます。
――でその日の晩には脱走してファンティーヌの埋葬や工場の引継ぎの手続きなどを済ませ、荷物をまとめて逃走するんですが、それじゃぁあまりにも理性的過ぎるじゃありませんか。ファンティーヌの死を目の前にして。まぁ誠実な生き方を目指すジャンが暴力を振るうってのもなんですが、演出的には盛り上がるでしょ?――てことでミュージカルバージョンで展開してみました。(財産はあらかじめ隠してたってことにしてね。)


さぁ、いよいよ舞台が移動します。
ミリエル司教との銀器のエピソードしか知らなかった私にとってはここまででも十分長編なんですけど、残りのストーリー展開を考えてみるとこれって序章みたいなモンかも?
なんにせよようやくコゼットが本編に絡んできます。(幼少時代のエピソードをどの辺まで描こうか、まだ決めかねてます。)

第20話:コゼット

マドレーヌとしての生活と決別したジャンはジャベールの追跡を逃れモンフェルメイユへ向かっていた。ファンティーヌの娘コゼットを引き取るためである。
しかしこのときの彼にコゼットがどんな扱いを受けているか知る由も無かった――
テナルディエは娘を思うファンティーヌの気持ちを利用して仕送りをせびる一方でコゼットを5歳の頃から女中として働かせていたのだ。
テナルディエの女房は自分の娘たちを溺愛する一方でコゼットには冷酷であった。その姿を見て娘たちもコゼットをいじめた。
日の暮れた真っ暗な森の中へ一人水を汲みに行くコゼット。
闇夜の恐怖に必死に耐え、水のたっぷり入ったバケツを必死に引きずるが、重くてなかなか進めない。動くたびにこぼれた冷たい水が彼女の足をぬらす。まだ街の灯かりの見える所まではかなりある。いつしかコゼットの頬は涙で濡れていた。
そのときふいにバケツが軽くなったように感じた。誰かがバケツを持ち上げてくれたのだ。
コゼットに手を差し伸べた男はジャンであった。二人の運命の出会いであった――

コゼットとジャンの出会うこのエピソードは原作本編の中でももっとも感動的な描かれ方をしているそうです。(なにぶん読んでないモンで……(^^;)
どれだけかわいそうな仕打ちを受けているか、コゼットに向けられる同情がピークに達したときに差し伸べられるジャンの手――
これを如何に二ページでまとめるか(泣)
いままで極力情景描写で説明に頼らない手法を取ってきたのですが、ここはあえて前半ページにナレーションを入れてみました。後半ページはほとんどセリフなしの情景描写なだけに効果的になったのではないかと個人的には思ってます。

●本当ならコゼットは境遇からしてガリガリに痩せてなきゃなんないんだけど、やっぱ見た目かわいい方が情が行くでしょ?
――ちょうど台風直撃してて、無事入稿できるか心配でした。


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