ストーリー裏話
(●ネタばれ:はマウスで反転させると読めます)

第21話:悲しき孤児

ジャンは少女がコゼットだと判ると旅行客としてテナルディエの宿場で泊まることにした。
そこでジャンが目にしたものはテナルディエ夫妻が行うコゼットへの仕打ちの数々だった。
他の娘とは明らかに違う穴だらけの古着、テーブルの下や部屋の隅に縮こまる姿が普段彼女がどう扱われているかを物語っていた。
ファンティーヌが自らの身を犠牲にして送った養育費がコゼットに使われることはなかったのだ。
コゼットの境遇を目の当たりにしたジャン。そこへジャンに金の臭いを嗅ぎつけたテナルディエが声をかけてきた。

偶然にも11話の韻を踏むようなタイトルになってしまいましたが、本当に不幸な母娘ですよね。
本当はこの一晩でジャンはコゼットに露骨なまでに愛を投入します。
なくしたお金を肩代わりした後、編まされた靴下の出来が悪いと叱られているとその靴下を買い取ってやり、テナルディエの娘たちの人形を離そうとしないコゼットを叱る女将をなだめ、最高級の人形をコゼットに買ってやる――etc
テナルディエでなくとも気付きますって。


●ネタばれ:》当初コゼットを引き取るまで一気に描こうと思ったのですが、丁度韓国へ一週間行くことになっていて、2話に伸ばしました。――いえ、次のシナリオが決まってなかったからじゃありませんよ。ただ帰国したらすぐ〆切だったし……いえ、ここのシチュエーションはじっくりと描きたかったんですよ。本当。

第22話:旅立ち

ジャンはコゼットとファンティーヌの親子を苦しめた張本人を目の前にしていた――
――景気はどうだ?
ジャンの言葉に対し巧みに話題を操るテナルディエ。
その姑息なまでの言い回しにジャンはテナルディエがコゼットを自分に高く売りつけようとしていることを確信した。
――いくら欲しいんだ?
1500フラン。
翌日ジャンはコゼットを連れてテナルディエの宿を後にした――


いかにテナルディエがムカツク野郎かを伝えたかったのですが、日曜の朝から気分の悪くなるマンガを読ませるのもなんだなぁと、ちょっとトーンダウンしてしまいました。
21話でも描きましたが、露骨なまでにやさしくしてくれたジャンにコゼットは喜んでついて行きます。マンガではその辺が描ききれませんでした。(週刊で2ページですもん)
テナルディエが二人の後を追って更に金をせびろうとするのは原作どおりだそうです。ただコゼットが「おじさんお母さんを知ってるの?」なんてセリフはないでしょう。当然「彼女は本当に君のことを愛していたよ――」なんてジャンが言うセリフもなかったでしょう。ただなんとなく言わせたかったんです。はい。
ちなみにテナルディエの宿を去るときに来ているコゼットの福はジャンが用意した喪服です。母ファンティーヌの死に対する。別にトーンをケチってベタにしたわけではありません。

第23話:ささやかな幸福

ジャンはコゼットを連れパリの下町に居を構えた。
コゼットは目を覚ますと、そこがまだテナルディエの宿だと勘違いして慌てて起きようとするが、そこにジャンの優しい笑顔が見えると安心して寝直すのだった。
今、コゼットは親元を離れて以来初めて平穏な朝を迎えていた
そしてジャンもまた初めて慈しむ存在を得た喜びを噛みしめていた――
今二人にささやかだが幸福なひと時が訪れていた
1860年以前の区画拡張前のパリは徴税の壁に囲まれており、市門で通行証の提示を求められる。
ジャンは昨晩コゼットを抱えてこの壁を越え、下層市民の居住区にまぎれたのであるが、この門に一人の男が部下からの報告を受けていた。
みすぼらしい身なりなのに毎日市民に金を分け与えている男の噂――
それがジャンであることを確信した男は部下に逮捕の指示を出した。ジャベールであった――。

どうもこのパターンが多いですね。10話でフォーシュルバンを介抱してるときにジャベールはマドレーヌの正体をジャンと確信してたし、24話でもファンティーヌとまったりしてるときにローマへ告発しにジャベールさん走ってたし……
――ま、次号へ引っ張る常套手段ってことで。

●ちなみに:>どうやって居を構えたかというと、パリのこの区域は通行証の提示を求められないんです。ジャンの場合現金即払いですし。その資金は市長時代の財産を万一に備えて(というか、ジャベールが赴任してきてすぐ)隠しておいたんです。実はその隠し場所がモンフェルメイユの森で、それを掘り出した足でばったり水汲みコゼットに出くわしたようです。(第20話)

第24話:逃避行

それはまだ冷え込みの厳しい春先のこと。ジャンとコゼットは間一髪でジャベールの摘発から逃れた――
なぜ彼がパリに……
ジャベールの存在に動揺するジャン。
当時パリは逃亡者にとって格好の潜伏先でもあった。ジャベールはマドレーヌの正体を見破った功績により逃亡者摘発の任を受けパリに赴任していたのだ。
闇夜にまぎれて逃げるジャン。しかし凍てつく寒さはコゼットの体から容赦なく体温を奪っていく。
――火に当てて暖めてやらなければ凍死してしまう。
意を決したジャンは一軒の小屋へ乗り込む。
100フランやるから、この子を火に当たらせてくれ
――おや、誰かと思えばマドレーヌさんじゃないですか
思いがけない反応に戸惑うジャン。彼の市長時代の名を呼ぶ男は一体――。


ここの逃亡シーンは原作でも視覚的効果を生かした息を呑む描写で定評のあるところらしいです。でもそういうのって、イザ絵にしてみるとさえないもんですよね。読者の想像力をぶち壊すだけですから。

第25話:父と娘

逃げ込んだ小屋の老人はなんとジャンがモントレイユ・シュル・メーユ市長時代に馬車の事故から救い出したフォーシュルバンであった。
ジャンが塀を越えて逃げ込んだそこはフォーシュルバンを庭師として紹介した修道院だったのだ。
久しぶりの再会に喜ぶフォーシュルバンはジャンに言った。「命を救った相手のことを忘れるなんて薄情な方だ。」
コゼットをベッドに寝かしつけ一息つくとフォーシュルバンはジャンにここに留まることを提案する。
丁度助手を申請していたところであり、警察の手も届かない。コゼットも寄宿学校へ入れることもできる。
この願ってもない申し出にジャンは一瞬躊躇した。
同じ敷地内とはいえコゼットと離れて暮らすことにためらいを覚えていた。ジャンにとってパリに来てからの数週間の生活でコゼットの存在はそれほど大きなものになっていたのだ。
――しかしこれ以上コゼットを逃亡生活につき合わせるわけにはいかない。
翌日ジャンとコゼットはフォーシュルバンの紹介で修道院長の面接を受けた。
即採用は決定した。このときジャンはコゼットを自分の娘として紹介したが、それがコゼットには何よりも嬉しかった。
父の愛を知らぬ私生児の彼女にとって、ジャンは理想の父そのものであった。
――その日からコゼットはジャンをお父さんと呼ぶようになった――

今回はかなりオリジナル解釈で突っ走ってます(^_^;
多分ジャンは躊躇することなく喜んで修道院に留まることを望んだだろうし、一つ屋根の下でいつもべったりコゼットと暮らさなきゃいやだなんて思わなかったと思います。
実のところここはコゼットがジャンをお父さんと呼ぶようになったエピソードの布石として入れたもので、大した意味はないです。
ただコゼットの方は本当に嬉しかったと思います。ファンテーヌがトロミエス(コゼットの父)に捨てられてコゼットは私生児として生まれ、4歳にしてテナルディエ夫妻に引き取られます。そこで数々の仕打ちをうけながら、実の娘には愛情を注ぐテナルディエ夫妻の姿を見ていたはずです。自分に愛情を注いでくれる父の存在に憧れないはずありません。
“自分と母を捨てた実の父を”というよりは“やさしいお父さんが欲しい、ジャンおじさんがお父さんになってくれたらいいのに”という発想でしょう。だから嬉しかった。
――そう解釈してこういう展開にしてみました。

●ちなみに:>修道院長はジャンの労働力以上にコゼットがお気に入りだったようです。原作では将来コゼットは醜い女性になると判断され、修道女候補生として見込まれていたとか……いつの時代も信徒確保は厳しかったのかも。


第26話:塀の中

プチ・ピクピュス修道院。
戒律の厳しいことで知られるこの修道院は大司教と庭番以外、男子禁制であり、修道女は男の姿を見ることも禁じられていたため庭番は膝に鈴をつけ、音で存在を知らせなければならなかった。
寄宿学校の生徒も修行以外は修道女と同様の規律が求められていた。
ジャンは時折この隔絶された空間をかつていた徒刑場と比べてみることがあった。
どちらも同じく贖罪を目的として塀に囲まれ隔絶された場所。
しかし徒刑場が自分の犯した罪であるのに対しここは他人の罪を償う場である。
前者が憎悪と呪いを生むのに対し
後者は祝福と愛を生むという大きな違いがあった
ここで過すことでジャンの中に大きな愛が育まれていった――
しかしジャンには漠然とした不安を抱えていた。
いつまでもコゼットをここに閉じ込めていていいものだろうかと――
いつまでも寄宿生としてはいられない。コゼットの将来のためいつかは決断を迫られるときが来ることを覚悟しつつ、時は静かに流れていった――

ほとんどナレーションで済ませてしまいました。(^_^;
説明的なセリフでは限界があるし、
別に鳥と戯れるコゼットを描きたかったわけではありません。でも少しは和むシーンがないと基本的に暗い話なんだし……ね。
ネタばれ正直今話のエピソード飛ばしてすぐ修道院を出たところからはじめても良かったんだけど、一応ジャンの中の愛の形成というか、もともとミリエル司教を通して愛されたことが彼の転機となったわけで、根底にあるキリスト教の精神を修道院で学ぶことである程度整理された部分があってもいいんじゃないかと……

第27話:外の世界

ジャンはコゼットと共に修道院を後にした。
生活に不満があったわけではないが、コゼットの将来を考えてのことだった
修道院生活6年目の秋。コゼットは15歳になろうとしていた――
パリの街の風景はコゼットの目に新鮮に映った。美しいものもそうでないものも――
目の前を囚人が徒刑場へ連行されていた。恐る恐る見つめるコゼットの姿にジャンの心境は複雑だった。
コゼットの目に映る彼らの姿は過去のジャン自身でもあるからだ。

パリはナポレオン没落以降勢力を盛り返してきた王党派による反動政治の只中にあった
特権階級が優遇される中市民の生活が改善されることはなく依然虐げられたままであった

落ち込むジャンをよそにコゼットは一人街を見て回るが、街角で出会い頭に青年とぶつかり転んでしまう。
この青年との出会いが二人の運命を大きく変えていくことをジャンは知る由もなかった


まだあどけなさが残るもコゼットが成長しましたね。
とにかく当時のファッションが謎だらけであの被り物の構造がなかなか理解できなくて苦労しました(^^;)
ここでフランスの社会情勢に第1話以来久しぶりに触れてます。25話を過ぎて残り半分(全50話予定)の区切りにもう一度……てわけでなく、今後の展開に社会情勢が大きく関わってくるからなのです。7月革命の前後って設定です(世界史得意だった人、見逃してね。)

ちなみにぶつかった青年は勿論
マリユスなんですが、原作では黒髪なんだそうです。モデルは原作者ユゴーの若かりし頃らしいのですが、ユゴーは誠実な青年は黒髪であるべきと主張し、自分のブロンドの髪にコンプレックスがあったそうなんです。
――ではなぜベタにしなかったかと言いますと、丁度仕上げをしてたときケーブルテレビで「富江」を見てまして、菅野美穂の狂気の演技に気をとられてて塗り忘れてしまったのです(爆
――ま、この際だからこのまま行っちゃえ――てなカンジでどうでしょ?

第28話:マリユス

コゼットとぶつかった青年は弁護士を志すマリユスだった。
お互い一目ぼれ状態ではあったが、コゼットはこれが恋だと分からずうろたえ、その場を足早に立ち去った。
コゼットの走り去る姿を見守るマリユス。我に返り慌てて追いかけようとするのだが、時すでに遅く見失ってしまうのだった。

マリユスは祖父ジルノルマンの手によって育てられた。
父ジョルジュ・ポンメルシーはナポレオン軍の大佐であったが、祖父のジルノルマンはナポレオンと共和制を忌む王党派だったため家を追い出されてしまい、マリユスは父と暮らすことはなかった。
マリユスは父の死後、生前の父の生き様と歴史を学ぶことで共和主義者となり、祖父の元を飛び出し、今は翻訳の仕事をして生計を立てていた。

カフェで少女(コゼット)のことを思い返しため息をつくマリユスを友人たちがからかう。
彼らは共和主義を信奉するABC(秘密組織)のメンバーであった。
この時点で二年後に彼らが起こす事件のことなど誰も想像すらできなかった――

ほんとベタなシチュエーションですみません。
原作ではコゼットとマリユスの出会いは公園でお互いを見かけることから始まります。
マリユスのコゼットに対する第一印象は修道院を出たての野暮ったいなんの魅力も感じられない少女でしかなかったようですが、半年後お洒落に目覚めたコゼットの変貌ぶりを見て虜になったということです。
それからしばらくの間は互いに目を合わせる程度の関係が続きますが、マリユスの存在に気付いたジャンが公園に行くのを止め、コゼットを連れ引っ越してしまったため二人は言葉を交わすことなく引き離されてしまいます。(このときジャンはコゼットの気持ちに気付かず、悪い虫がつかないように程度にしか考えてなかったようです。――すでに手遅れでしたね)

ネタばれABCのメンバーが起こす事件は本当は一年後ですね。コゼットがジャンと共に修道院を出た年から二年後であって、マリユスと互いに意識しあうこの時期はその一年後の設定なんです。ちょっとゴッチャになってますね(^_^;)

第29話:見知らぬ隣人

コゼットを忘れられないマリユスは彼女の行方を探すが一向に見つけられないでいた。
マリユスにはもう一人探し人がいた。
彼の父ジョルジュ・ポンメルシーの命の恩人である。
――その恩人の名前はテナルディエ……

マリユスは自分の住む館からジャンとコゼットが出てくるのを目撃。
慌てて追いかけるがすでに馬車で去った後だった。
落胆するマリユスに同じ館に住む隣部屋の住人の娘であるエポニーヌが声をかけてきた。
さっきの二人が彼女の一家の客人だとわかると、ものすごい勢いでどこに住んでいるか問い詰めるマリユスは好きなものをなんでもあげるかわりに住所を調べ出すことを約束させる。
自分の部屋に戻るエポニーヌ。
部屋にいたのはなんとあのテナルディエ夫婦であった。
なぜ彼らのもとにジャンとコゼットは訪れたのか?マリユスの父の命の恩人とはどういうことなのか?

これまで好青年っぽく描かれてきたマリユスのイメージが一転して崩れます。
――いや、本当は誠実で潔癖な好青年なのですが、今後の展開を考えるとコゼットのこととなると周りが見えなくなるくらいのほうが(実際そうなる)都合がよく、少ないページとコマ数で話を進めるのに便利なのです。(マリユスファンの方ごめんなさい)

第30話:暗躍

探していた人物が自分の隣人に会いに来たのを知ったマリユスは好奇心から壁の穴を通して覗き見してみた。
テナルディエは宿屋の営業に失敗しパリに移り住んでいたのだ。
彼らは貧苦のためいろんな慈善家の住所を調べて嘘の手紙を書き、娘に持たせて慈善家の情けにすがる生活をしていた。
テナルディエはさっきの父娘がコゼットと彼女を連れ出した男(ジャン)であることに気付いていたが、気づかないフリをしたまま家賃が溜まっていると嘘をつき、夕方支払い分の金額を持ってまた戻ってきてくれるよう頼んでいた。
仲間を呼んで彼を監禁し、金を奪おうと言うのだ。

その計画を壁越しに聞いたマリユスは慌てて警察へ通報する。
「現行犯逮捕する必要がある。我々が館を包囲するから、君は自室に戻って合図を送ってくれ。」
ジャベールはそう意って拳銃をマリユスにわたすのだった。
何もしらないジャンは再びテナルディエ一味の待ち受ける館へ向かっていた。

いよいよオールキャスト登場です。ルパン逮捕に人生かけてる銭形警部と違ってジャベールはジャン逮捕に執念を燃やしているわけではなく、たまたまよく出くわすだけのようです。普段は忠実な公務員として警察業をこなしてまして、今回もテナルディエが加勢に集めた仲間が以前からマークしていた「パトロン・ミネット」と踏んで自ら陣頭指揮に当たっただけです。それにしても民間人であるマリユスに拳銃を預けるなんて……

そのマリユス、とうとう覗きまでやっちゃいました。もともと原作にある行為なのですが、29話でも触れたようにページをはしおったために軽薄に映りますが、覗いた動機は、隣に貧困で苦しむ家族が住んでいたことに気付かなかったことに良心の呵責を感じ、どんな暮らし振りなのか気になりだしたところ、たまたま隣を覗ける穴を見つけたことで悪いとは思いつつ覗いてしまった――というのが本来の流れのようです。
まぁ、意中の女性が訪れた隣人がどうしても気になって――て解釈でもいいかなと。そういうことです。

ネタばれこのところ主役のはずのジャンの影がとても薄いです。ここ数話マリユスの視点で物語が展開してますが、今後更に別の登場人物の視点で展開していきます。(^_^;)ジャンに主導権が戻るのはいつの日か……


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